すばらしき世界(ネタバレ)

すばらしき世界おすすめ度4.1

※おすすめ度見方 0~1     見る必要無いかも。
1.1~2.0   100人いたら90人は微妙かな。
2.1~3.0   好みの違い。
3.1~4.0   行って損なし。価格や場所、評判次第で行くかどうか決めよう。
4.1~5.0   いますぐ観に行こう。見逃したら絶対に後悔する。

すばらしき世界

邦画の良作連発期間に突入している。「花束みたいな恋をした」「ヤクザと家族」そして極めつけがこの「すばらしき世界」。映画としてのクオリティや射程の長さは西川美和監督が一段上。「分福」、隙がない。
西川監督が、念願の役所広司とのタッグで送る「すばらしき世界」。佐木隆三の原作タイトルは『身分帳』。下地には、旭川刑務所を出所した実在する元殺人犯を記録した「身分帳」(入所者の経歴や素行の記録)の存在がある。映画でタイトルを変更した理由は物語中盤からラストにかけてはっきりとする。善悪の二項対立を超える結末を観客に突きつける、そのタイトルの出し方に痺れた。

登場人物全員が芸達者。それ以上に西川美和の指導・演出が素晴らしい。2021年現在、役所広司は間違いなく日本を代表する役者。世界的には渡辺謙の知名度が上かもしれないが、演技の多彩さ、作品選びの嗅覚、存在感でいえば、役所広司がまさにトップだろう。今回もうまい…。「シャブ極道」と「孤狼の血」の真ん中あたり……生真面目で一直線、暴力的ではあるが心根の優しいヤクザもんを、なんとまあそこにいそうな佇まいで演じている。冒頭の雪の降る北海道の刑務所のシーンから期待が高まる。役所広司は今回はどんな演技で望むのかと。ヤクザものには辛い娑婆で、なんとか更正しようとしても、たすけてくれる人はいない。生活保護が払われるから生きていける、だから満足…ではない。人間にとって働く事、つまり社会と関わることは自分自身の存在価値を見出すために必要なこと。だから役所広司は出所後すぐに働くプランを考えるし(見当違いで悲しいが)、なんとか運転免許証を取得して就職に繋げようとする。社会との接点を作るためにもがく。でも、社会とそこにいる人はそれを拒む。身許引受人の橋爪功は、できるだけ力は貸そうとするが、自分の孫より役所広司が大切なわけもなく、本当に必要な時に頼れない。六角精児演じる偽善者のスーパー店長は、最初から最後まで偽善者。自分の世の中に対する考えをお披露目するために、その正しさを確認するために、前科者に上から目線でアドバイスする。役所勤めの北村有起哉は、自らの仕事の範疇を超えた行動を見せはするが、組織や制度のしがらみから抜けることがなかなかできない。この三者、かなり善人である。善人ではあるのだが、西川美和はそれだけで終わらせない。チラと垣間見える、自分本位な人間の本能。それが溜まりに溜まって、社会から救われない人が出てくるというどうにもならない現実。しかし一人だけ、違和感を持つ人間がいる。ディレクター役の仲野太賀だ。役所広司の就職祝賀会での、違和感。うまくいっている、現実に適応できる、そう感じさせる中での役所広司への違和感。本来正しいとされていることさえ曲げて社会に適応していくことそれこそが、生きづらい世を作る真の癌なのではないか。役所広司の結末を予期していたのは、作中で仲野太賀だけだろう。(精神的な役所広司の死)

MVPは仲野太賀。大躍進!後半、役所広司に寄り添い始めてからの、ちょっと不安そうな、ちょっと泣きそうな、ちょっとなにか言いたげな表情が素晴らしい!!!そしてキムラ緑子!(白竜が出てきた時は劇場は笑いに包まれた)。もう諦めている…けど仁義は捨てていない姐さんを熱演!!!屋敷に帰ってきた役所広司を帰すシーン、最高!フー!

ただのエンタメでもなく、ただの社会派でもない。要所でコミカルシーンもあり(六角精児に対して用心棒を買って出る場面は笑えた)、役所広司の演技に微笑んで、かつ振るわせる。日本アカデミー賞を間違いなく席巻する一作。

一点だけ、長澤まさみの演技だけ、全体の空気感からずれていた気も。素晴らしい役者さんなのは間違いなく、演技のトーンが違うというか。そこだけ残念!

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