カズオイシグロ『クララとお日さま』(ネタバレ)

クララとお日さま

カズオイシグロ『クララとお日さま』4.5

※おすすめ度見方 0~1     読まなくてもいいかも?
1.1~2.0   100人いたら90人は微妙かも?
2.1~3.0   好みの違い。
3.1~4.0   読んで損なし。
4.1~5.0   いますぐ読もう。読み逃したら絶対に後悔する。

シンプルな一直線の物語が、この上なく心に染み渡る。文才としか言いようがない。とても面白かった。AIロボット・クララと、そのクララを購入し一緒に暮らす病弱なジョジーの物語。「信頼できない語り手」を得意としてきたイシグロだが、今回の視点人物はまさかのAIロボット。いやいや、親和性が高いと思った。すべてクララ視点で語られる。クララは人間ではない。だから、読んでいて違和感のある描写が出てくる。ボックスやパネルという概念、クーティングズ・マシーンの存在、AF(特にクララ)のお日さまに対する考え方、人間の見え方etc.この視点が抜群に面白い。当然の如く最初のうちは読みづらいが、読者は想像力を最大に使って、AIの目線に自分の目線を重ねながら読みすすめる。読書の醍醐味。ラストに店長が出てきたのには泣いてしまった。あぁまた会えて良かったね。イシグロの持ち味である驚きの要素もきちんとある。クララがジョジーの母親に見初められた意味。彼女たちがAFを探していた理由。自画像の作成は、病弱なジョジーの完璧な後継を作るための作業。このあたりから物語のギアが変わり、猛スピードで結末まで突っ走る。クーティングズ・マシーンを壊すための(ジョジーを助けるための)クララの決死の行動。その後のセカイの見え方の悲しさ(バグったセカイ)。お日さまを信じて祈り続けるクララ。そして起こる奇跡。その後、彼らは大人になり、ジョジーとリックは恋仲ではなくなっている。でも、お互いを思う気持ちは持ち続けている。ジョジーは、いまでは病弱だったあの頃のことが嘘のように元気だ。そうして別れは訪れる。あぁ……。環境問題が背景にはある。私達人間のほうが、AIよりもよっぽど危険なんじゃないのかと思わせられる。クララの純真さが、この物語の純真さが、フィクションの強度が、世界を変えるのかもとちょっと思ったりもして、改めて小説の凄さを思い知りました。

クララとお日さま
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